Automaticは、Izzy Glaudini (シンセ/ボーカル)、Lola Dompé (ドラム/ボーカル)、Halle Saxon (ベース)の3人によって、2017年にLAで結成。2019年に同地の名門インディーレーベル、Stones Throw Recordsからアルバム『Signal』でデビューするも、世界はパンデミックに見舞われ満足な活動が困難に。そのさ中に、2ndアルバム『Excess』をリリース。未曽有の事態も落ち着き、再び世界を回ることができるようになってからは積極的なライブ活動を行い、本国のみならずUKやEUでのツアーも軒並みソールドアウトさせた。
紆余曲折の中で着実にプロップスを高め、このたび初のアジアツアーが実現したことを記念しての日本語では初となる独占インタビュー。パンデミックから現在までのメンタルの変化や、LAのシーンのこと、そしてそもそもAutomaticとはどんなバンドなのか、そのサウンドや活動の指針について、HalleとLolaに話を訊いた。
◆LAのシーンや所属レーベル、Stones Throw Recordsについて
――2019年9月に1stアルバム『Signal』をリリースした翌年にパンデミックが世界を襲い、満足できる活動ができなくなった時期から、こうして世界を回ることができるようになった今の間に、精神的な変化はありましたか?
Halle:感情の起伏が激しかったです!私はもともと感情的な人間で、世界的なパンデミックの中に生まれた美しさや混乱によって、気分がジェットコースターのように揺れ動きました。そして、再びこうして世界を回れるようになって、本当に幸せです。世界のさまざまな場所に行けることは、この仕事の醍醐味の一つなので。しかし同時に、ツアーが私たちの環境に与える負担についても考えなければならず、その状況を受け入れることが難しいときもあります。
――そして初めてのジャパンツアー。日本のカルチャーで、興味のあることがあれば教えてください。インスタグラムでのHalleのDJの告知には、もともとアメリカ拠点ではありますが、日本人のユニット、Cibo Mattのレコードも写っていましたね。
Halle:はい、Cibo Mattoに夢中です!私とIzzyは初めての日本なのですが、私たちのマネージャーの1人であるJodieは、日本に10年以上住んでいたことがあり、その頃の素晴らしい話をたくさん聞かせてくれました。彼女がふだん通っていた場所に行ってみたいですし、ロカビリーやタトゥーのシーンにも影響を受けたそうなので、そういったカルチャーにも触れてみたいですね。
あとは、日本の庭園や、鹿がたくさんいる場所に行くこともすごく楽しみにしています。ほかにも、日本人にはお酒を全く飲まない人がたくさんいて、ノンアルコールの美味しいドリンクが充実していると聞きました。それってすごくナイスだなと思っていて、早く飲んでみたいです。
――Automaticが拠点にしているLAのシーンについても話を聞かせてください。というのも、今回あなたたちを日本に招くことになった私たちSUPERFUZZは、2019年にDJ4人が集まってパーティーを開いたことから始まったのですが、そのときの世界観の参考にした作品の中の2つが、Automaticの『Signal』とSextileの『3』でした。それは偶然のことで、両バンドに交流があることをあとから知り、現行のLAのアンダーグラウンド/パンクシーンに興味を持つようになったんです。
Halle:それはほんとうに素晴らしい!Sextileのクルーは私たちにとってとても大切な存在で、私たちは彼らの大ファンでもあります。彼らはコラボレーションやサポートの精神を持っていて、それはLAのシーンでは珍しいことです。そんな中でも、私たちはみんなZebulonというべニューが大好きなんです。環境もブッキングもとてもグッド。そして私たちの所属する、Stones Throw Recordsもまた、とても協力的な環境でコラボレーションに積極的です。レーベルの運営するGolidlineというレコードバーも、コミュニティを見つけられる素晴らしい場所になっています。
――Stones Throw Recordsはインディーミュージックのリリースもありますが、ヒップホップ作品のイメージが強く、そういう意味でAutomaticが所属していることは、意外と言えば意外でした。レーベルとの関係はどうですか?
Halle:ですよね!レーベルを主宰するPeanut Butter Wolfがやることには、みんないつも驚かされるんです。彼はヒップホップ界で消えない足跡を残した人物として知られていますが、いろんな音楽に夢中な人で、何千枚ものレコードを所有しています。そして、多ジャンルにわたるバンドやアーティストと契約してきた歴史があって、決してヒップホップだけではない。しかし、私たちのように少しマイナーなリリースが多いので、その事実はあまり知られていないかもしれません。
ですが、見方を変えると、彼はリスクを取ってマイナーなものを嗅ぎ分けてきたからこそ、世界最高のヒップホップアーティストを発掘することができたとも言えます。そして、そんなアイコンたちと同じレーベルに所属していることに、私たちはいつも驚きと感謝の気持ちを抱いています。
◆制限によって生まれる創造性
――私たちはあなたたちのビジュアル/ファッション面からも刺激を受けています。また、CELINEやMiu Miu、GIVENCHYのランウェイ、GUCCIのCMなど、ファッションブランドの企画であなたたちの曲が使用されていたことも、日本での人気に寄与しているのですが、そのことについてどう思いますか?
Lola:私たちはとても視覚的なバンドで、映画や本などから多くのインスピレーションを得ています。視覚芸術と音楽のコラボレーションが大好きで、私は特にファッションと音楽のクロスオーバーに昔から興味を持っていました。双方の人たちが、お互いをアーティストとしてサポートし、尊重し合えば、とても楽しい相乗効果が生まれると思っています。
ファッションは私が音楽を始める前の主な表現方法で、今でもライブをするうえで大切にしている要素の1つです。ここ数ヶ月は、アジアツアーのために衣装を集めていて、今のところカウガールドレス、ミーム(道化師)の衣装、そしてチアリーダーのスカートを持っています。
――引き続き、Lolaに質問します。LolaがBauhaus/Love and RocketsのKevinの娘であることを知っている日本のファンも少なくないので、音楽一家に生まれたことの影響について、聞かせてもらうことはできますか?
Lola:父と、姉もまた素晴らしいミュージシャンで、家族全員が私の活動を応援してくれています。私は彼らの意見を信頼していて、デモを送ったときに率直で価値あるフィードバックをもらえることがほんとうに嬉しいです。また、幼い頃から素敵な音楽に触れる機会を与えてもらえたことにも感謝しています。最近は、私が発見した新しい曲の中から父の好きそうなもの選んでプレイリストにして送ることを楽しんでいます。
――あなたたちの音楽はパンク、ポストパンクやニューウェーブ、クラウトロック、ロックンロール、エレクトロニックミュージックといったさまざまな音楽へのリスペクトがあったうえで、ジャンルを背負わない自由な発想が魅力だと感じています。レトロなカルチャーの再現性や継承と、モダンであること、そしてオリジナリティの関係性について、どう捉えていますか?
Halle:私たちの目標は常に、影響を受けたさまざまな音楽にある最良の要素をすべて引き出し、それらを私たち自身の感性を通して採り入れ、そこから、できれば新しい何かを生み出すことです。
――基本的に3人で演奏可能な音数、シンプルな構成と反復というミニマリズム、ローファイな感覚がオリジナリティを形成する重要な要素だと感じているのですが、サウンドのこだわりについて、教えてください。
Halle:私たちは常に他とは異なる存在でありたいと思っています。とはいえ、私たちは3人とも、音楽学校に通っていたわけでも、Canのように教会で1日23時間リハーサルするわけでもありません。では、自分たちの思い描くサウンドを作るためにどうするのか。ただ音楽を聴いて、それを愛し、感じ、自分たちが作る音楽に感情を込める。そして、自分たち自身がほんとうに良いと思えるものを作ることに努めてきました。その中で、Automaticを結成した頃から、あなたがミニマル、ローファイと言ったように、ある意味で自分たちを制限することによって創造性や独自性を引き出すことが、制作の起点になっています。
――2019年にリリースした1stアルバム『Signal』と、2023年にリリースした2ndアルバム『Excess』、それぞれで目指した方向性と変化についてはいかがですか
Halle:『Signal』は、どちらかというとパーソナルな作品だったと思います。砂の上に線を引いて、「これが私たち、私たちは他とは違う」と言っているようなイメージです。そして、『Excess』はパンデミック中に制作していたこともあり、間違いなく私たちの周りの世界で起きていることが作品の内容に大きく作用しました。その広い視点へのシフトは、今でも私たちに影響を与えています。
◆お金の話?そんなことは忘れてください
――まだ映像でしか観たことがありませんが、あなたたちのライブはときにスリリングで、ときにハッピーで、大きなアクションはないもののとてもフィジカルで人間的なエネルギーを感じます。あなたたちにとってのライブとは?
Halle:私たちはライブでパフォーマンスすることをほんとうに大切に思っていますが、私たちは世界でもっともアニメーション的(動きのある)なバンドというわけではないので、そのことが誰にとっても明らかではないかもしれません。それでも、オーディエンスに私たちの思う正しい体験を提供できるようにしたいので、サウンドや演奏の仕方には深くこだわっています。常に音響スタッフとも連携を取りながら素晴らしいショウを届けられるように努力しているので、楽しみにしていてください。
――今はかつてほどオルタナティブなバンドに追い風が吹いている状況ではありませんよね?それでもバンドを続ける楽しさや意義について教えてください。
Halle:実際のところ、バンドやアーティストでいることはほんとうに大変な時代で、そこに苦々しい気持ちを抱かずに活動することは難しいと思います。そんな中でも、世界で起きている重要なことについて話し、私たちのプラットフォームを良い方向に活用することが果たすべき義務だと感じています。ただ楽しいだけではないんです。お金の話?そんなことは忘れてください。
とシリアスなことを言いつつ、私は曲を演奏したり音楽を聴いたりすることに、いつも喜びを感じています。世界で何が起きても、人から魂に響く曲を聴く純粋な喜びを奪うことはできません。そして、もし私たちの音楽が誰かにとってそんな存在になれたなら、そんな音楽を提供できたなら、それはこの上ない特権だと思っています。
――現在取り組んでいるプロジェクトや、今後の活動のことなど、話せる範囲で教えてもらえると嬉しいです。
Lola:3枚目のアルバム制作に取り組んでいます!ミックスはほぼ完成していて、これからアルバムアートやミュージックビデオなどのビジュアル制作に取り掛かるところです。
――日本で会えることを楽しみにしています!
Lola:このバンドを始めたときから日本でツアーをすることにワクワクしていました。みなさんのために演奏できることが待ちきれません!
インタビュー・文:TAISHI IWAMI
トップ写真:Dana Trippe
協力:Stones Throw Records
Automatic Japan Tour 2024 in Tokyo
Date : 2024.12.1(SUN)
Place : CIRCUS TOKYO
Open / Live Start:18:00 / 19:00
Adv : 5,500yen (+ 1drink Fee 700yen)
Live:Automatic, bed
DJ:ORM, SUPERFUZZ DJs
■Tickets
https://superfuzz2019.zaiko.io/item/366737
https://eplus.jp/automatic
Automatic Japan Tour 2024 in Osaka
Date : 2024.12.8(SUN)
Place : NOON+CAFE
Open / Live Start:18:00 / 19:00
Adv : 5,500yen (+ 1drink Fee 600yen)
Live:Automatic, bed
DJ:SUPERFUZZ DJs
■チケット購入
https://superfuzz2019.zaiko.io/item/366738
https://eplus.jp/automatic/
SUPERFUZZ
Date: 11.29(Fri)
Place: Shibuya Studio Freedom
Open / Close : 23:30 / 5:00
Entrance: 3,000 yen (Door Only)
*Entrance Free with Automatic Japan Tour 2024 ticket
Live: Automatic / bed / HOME
DJ: HALU / SUPERFUZZ DJs (KEIGO / MUSASHI / TAISHI IWAMI)
SUPERFUZZ in Osaka
Date: 12.7(Sat)
Place: Alffo Records
Open / Close: 18:00 / 23:00
Entrance: 2,000yen + 1 drink fee (Door)
*Only 1 drink Fee with Automatic Japan Tour 2024 ticket
DJ:
Automatic
monchi
OHNO SHINSUKE
村田タケル
ナカシマセイジ
SUPERFUZZ DJs (MUSASHI / TAISHI IWAMI)